動物園で動物のお引越し、それはもう一大イベントです。体重が何百キロもあるキリンやサイなどは小型動物のように捕獲してケージに入れることもできないので、何週間も前からお引越し用の移動ケージに慣らしておくなど、準備が大変です。
無理やり入れようものなら、箱の中で大暴れしたりして、お互い怪我をしたり時には命に関わるようなことになるため、麻酔銃を用意するなど緊迫したムードになることも少なくありません。
しかし、ゾウガメのお引越しはとっても穏やかです。カメとはいえど野生動物。大変ですよ。大変なんですけど…。でもどこか、幸せな気分になってしまいます。
今回は動物園のゾウガメのお引越しについてご紹介します。
日本動物園で出会えるゾウガメ
日本の動物園で出会えるゾウガメは、主にアルダブラゾウガメとガラパゴスゾウガメの2種です。日本動物園水族館に加盟している園館内の話ですが、意外に少ないですね。
ガラパゴスゾウガメ
日本の動物園では上野動物園でしか見ることができない貴重な種です。カメ吉(1960年3月10日生)と太郎(1969年2月21日生)の2個体が飼育されています。カメ吉は63歳、太郎は54歳ですが、ゾウガメとしては心身ともに成熟した壮年だそうです。さすがカメさん、長生きです。
私、幼稚園の頃にどちらかのカメさんにお会いしています(笑)。
アルダブラゾウガメ
日本の動物園水族館では、最も多い27園館で飼育されているゾウガメです。日本では一番メジャーなゾウガメと言ってよいでしょう。
なぜゾウガメたちは引越すのか?
ゾウガメにとって日本の冬は寒すぎるため、気温が下がる前に暖かい場所へ移動させる必要があるためです。
逆に、春が来て気温が上がってきたら、広い屋外に出すことになります。冬場の暖かいスペースは限られているので、気温さえ上がれば屋外の方がゾウガメにとって良い環境であることが多いのです。
というわけで、春と秋に年2回お引越しをするわけです。
ゾウガメのお引越し方法
ゾウガメたちのお引越し方法は、動物園では大変めずらしい「徒歩」です。サルなどの動きの速い動物は、よほど慣れていないと逃げてしまいますし、爪や牙のある動物ではお互いにケガをしてしまう可能性があるため、到底できない手法です。温厚な性格のゾウガメであるからこそできる、優しいお引越し方法と言えるでしょう。
しかし、どんなものにも欠点があります。それはゾウガメが「重い」、歩くのが「遅い」です。
アブラダルゾウガメの体重はオス250kg、メス150kgになります。動物園が開園してから日没までに、お引越し先に到着しないとなりません。
ゾウガメをおいては帰れません(笑)
長崎バイオパークでは、閉園後に来園者がいなくなってから園路を歩かせて移動していますが、日が暮れてきたので最後は数人で担いで移動させていました。
ゾウガメの引越しが見られる動物園
ゾウガメの引越しを一般公開で行っている動物園は、今のところ大島公園動物園のみのようです。
東京都立大島公園動物園(東京都大島)
6~10月の暖かい時期は屋外、それ以外の寒い時期は室内と、気温に合わせて飼育場所を移動するため、その前後でお引越しを見ることができます。
地元の幼稚園児がアシタバの葉をリクガメの顔の前に出し、それに誘われてゆっくりと歩く姿がなんとも平和…。
ちなみにアシタバ(明日葉)は伊豆諸島ではよく野菜として食用にされている多年草で、「今日、葉をとっても明日芽が生えてくる」という強靭さをもっており、栄養も豊富です。これを生で食べているのですから、いかにも長生きしそう!
アシタバの若葉の天ぷらがサイコーに美味しいです!
城山動物園(長野県長野市)
アブラダルゾウガメの「アップル」が体重90kgと体が大きくなったので、広い新居まで約100mのお引越しする様子が公開されました。大好物のイチゴに誘われて歩き出しますが、道端に生えていたシロツメクサを食べ始めたりしながら、新居までの100mを3時間半で駆け抜けたそうです(笑)。
こちらは新居のカメハウスへのお引越しでしたので、この時だけの開催と思われます。
まとめ
リクガメのお引越しが見られるのは、大島公園動物園だけとなっています。生き物ですので、体調や天候などによって変更があリます。詳細はこちらへお問い合わせしてくださいね。