アシカ・アザラシ・オットセイなどのひれあし類の種名を漢字で書くとどうなるのでしょうか。
私はてっきり和製英語で漢字はないと思っていたのですが、調べてみると諸説あるものの、しっかり和名がありました。
ここではそのひれあし類の種名の漢字表記についてご紹介します。
アシカは「海驢」「葦鹿」
海驢の「驢」という文字は「ろば」と読みます。
つまり海に住むロバ、という意味ですね。鳴き声がロバに似ていると思ったんでしょうか。
ちなみにペンギンの一種であるケープペンギンも、鳴き声がロバに似ていることから、英語では「jackass(ロバ) penguin」とよばれます。
こうなると本物のロバの声をよく聞いてみたくなりますね。
「葦鹿」は「葦(アシ)の生えているところにいるシカ」の意です。
アザラシは「海豹」「痣之獣」
アザラシの別名である「かいひょう」からの当て字と考えられています。
体毛の斑紋が、豹(ヒョウ)の体の表面にある黒い斑点が豹のように見えることから「海豹」と呼ばれています。
またこの模様を痣と見て、「痣之獣(痣のある獣)」と表記することもあるようです。
こうやって、写真で見比べてみるのもいいですね。
オットセイは「膃肭臍」
オットセイの名前の由来は、他の鰭脚類に比べて少し複雑です。
複数の国語辞典では、もともとはアイヌ語でオットセイを指す「オンネプ」という言葉が、交易のあった中国で「膃肭(オツドツ)」と音訳されたのが始まりとありました。
しかし、これと異なる説もあったので、私の知り合いの中国人の友人に確認してみたところ、「膃肭」という文字は見たことが無いし、「オツドツ」とは読まないと言っていました。
とにもかくにも、中国ではオットセイの陰茎が強精剤として利用されており、その薬が日本に入ってきた時に、動物そのものを指す言葉になったという説が主流です。
この様にアイヌ語が元になっている言葉は他にもあり、動物の名前になっているものには「ラッコ」や「トナカイ」などがあります。
アイヌの人々が暮らしていた北海道周辺にはキタオットセイが冬になると回遊してきますから、きっと馴染みのある動物だったのでしょう。
トドは「海馬」
海馬は「かいば」と読むか、「うみうま」と読むかで意味が変わります。
「かいば」と読む場合、鰭脚類の「トド」もしくは大脳の一部である「海馬」のどちらかを指します。
「うみうま」と読む場合、「タツノオトシゴ」の別名になります。
読み方で意味が変わるなんて、面白いですね!
【出典】1. 動物名の由来 東書選書66 中村浩著 1981年 2.小学館 新選国語辞典 3. 三省堂 新明解国語辞典 4.小学館 現代国語例解辞典 ほか